小さな出会い

いつものように通勤バスでベビーカースペースに立って
外を眺めていたら、後ろで変な音が。
ビリビリビリ・・・。
振り返ると直ぐ後ろの席に座った16くらいの女の子。
白い顔、ブルーの目の周りを銀色のアイシャドウ、いかにも今時の
ちょっと退廃的なティーンエージャーといった容貌。
壁に貼ってある注意書きステッカーを無言でびりびりと剥がしている。
何やってんの?と思う間もなくバス反対側に座っていたカリビアン系の
おじいさんが一喝。

おじ『こら、あんた、何やってるんだ、はがすんじゃない、やめろ!』

女の子『What? You’re not my father! 
何よ、私のお父さんじゃないでしょ!』

父じゃないのに、つまり親じゃないくせに注意するなよって
開き直るガキが多い南倫敦今日この頃。彼女もそのタイプ。

おじ『父親じゃなくったって言えることだよ、関係ない。やめろ、そういうことは!』

女の子『私にどうしろってのよ。うるさいな〜そっちこそ失礼だよ・・』
と自分の過ちを棚に上げておじいさんを非難し始めた。

おじ『失礼だと!あんた、自分が何やってるのか、わかってんのかい?』

二人のやり取りを見守る私を含めた乗客。私は無言だったが
他の客の幾人かはおじいさんの肩を持つように相槌を打って
成り行きを見守っていた。
ひとり、まるで女の子に同意するかのようにおじいさんを見て
首を横に振っている男(白人)がいたのが気になったけど
私だって何もしてないんだから人の事はとやかく言えない。

女の子『もう、好きにすれば?どうするの?運転手に苦情でも言うつもり?』

おじ『何だ、その態度は!まちがっとるぞ!おお、言ってやるとも!
(運転手に)Driver、there’s a vandal on the bus! 
運転手、バンダル(直訳・公共物破壊者)がいるぞ!』

それを聞いて女の子は可笑しくてたまらないとでもいうように吹き出した。

女の子『It doesn’t bother me a minute ‘cause I’m getting off
at the next stop.別に言ったからって私にはどうってことないわよ、
もう次で降りるし〜』

おじさんは諦めたか無言。
女の子は引き続きビリビリとステッカーを剥がし続ける。
ふと今まで見守っていた50代くらいのおばさん(カリビアン系)が
女の子の傍までやってきて
『だめ、だめよ、やめなさいよ。どうしてそんなことするの?』と諭しはじめた。

女の子『もう〜ほっておいてよ〜』

おば『どうして?そんなことする必要ないでしょう?どうしてするの?』

女の子『Because I’m bored. 退屈だから・・・』

おば『退屈だからって、公共のものをいけないでしょ?』

女の子『こんなの、他にも沢山あるから平気よ〜』

おば『いいえ、だめよ、そんな物壊すようなことは。あなた、退屈だって
学校はどうしたの?行ってないんでしょう?』

女の子『I’ve finished school. 学校は終えた、卒業した』

おば『学校もないで何にもしてなかったら退屈にもなるわよ!仕事は?
してないんでしょう?』

女の子『・・・』

おば『仕事でも始めたらいいじゃない、若いんだし、お店まわって
募集してないか訊いてみるとか、履歴書配ったりとか、ね、したら
いいんじゃないの?』

女の子『I suppose・・ まあね〜』

おば『他人から過ちを注意されてあの返事は良くないでしょう?
あなたのような可愛らしい人があんな態度じゃ、台無しじゃない?』

女の子『・・・』

おば『私はもう50過ぎたし、後ろのおじいさんはもっと年取って
人生経験積んでいるのよ。私のお父さんといってもいい年齢の人に
あの言葉づかいはちょっと酷いんじゃない?』

女の子『・・・』

おば『そういう大人の人たちに意見されたらちゃんと聞けるように
ならなくちゃ。あなたはほんとはいい子なんでしょう?
他の人の話、聞けるようにならないとね、わかるでしょう?・・』

女の子はもう、うるさい〜ほっといて〜と生意気に言い返すことも
せず黙っていた。女性の言うことを噛みしめていたのか、ただ
無視しようとしてたのかわからないが、はにかみながら小さくだけど
頷いていた。
バスを降りてからも女の子と少し一緒に歩いて人の話、聞けるように
なってね、まだまだこれからなんだから、頑張るのよ・・と
懇願するようにしてからその女性は去っていった。

背中に羽根は、はえてなかったかな。

この小さな出会いが女の子を変えることはないとしても。
見も知らない全くの他人の女性が示した思いやりが女の子の心に
ちらりとでもふれたかどうか。
私も同じバス停で降りて次のバスに乗り換えた。
車中から通りを見ると偶然にもあの女の子が向かいの通りを歩いていて
彼女がふと見上げたときに目が合った。
悲しい暗い目。ちょっと気まずそう。
私は直接勇気もなにもなくて言えなかったけど、その時、切に思った。
あなたしだいだよ、頑張れって。

・・でもまあ、変わらないだろうな。
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1回では無理でも
その娘にそのような出会いが数回あれば
きっと変わるよ
多分自分でもわかってるのよね〜
このままではいけないって
甘やかすのはいけないけど
頭ごなしに否定するのも余計頑なにしてしまう
暖かい気持の元での叱責は必要ですよね
そのオバサンは勿論
無言でも「がんばれ〜」という視線は通じるような気がする
2007/10/21(日) 00:22:36 | URL | katasumi #be3FNRow[ 編集]
katasumiさん
実は彼女の母親らしき女性も一緒のバスで
この事が起こる前に降りちゃってたんですけど
うーん、あの人じゃあいいお手本にはならないだろう
っていうか、あの母にしてこの子ありだな〜みたいな・・・。
周りにもっとお手本になるような人がいる
環境なら違ってくるんでしょうけど・・
もっとこういう素敵な出会いが彼女にあるといいなぁ。
2007/10/22(月) 01:18:23 | URL | stipa #bM1nxC7.[ 編集]
こちらでも
この記事を読んだ次の日くらいに
禁煙の地下ホームでタバコを吸ってる男の子に
ある初老のおばさんが「ここは禁煙ですよーっ」て言ったら
一緒に居た女のこが「ほっといて!」と大きな声で反論してた。
タバコを吸ってた男の子は
「外で吸いながら歩いて入ってきて気が付かなかったよーって」
すぐ消そうとしたのに
その女の子が「消さなくていいわよ!関係ない!!」って
ずっと大きな声で怒ってた。
その男の子のように素直なら悪気がなかったのはわかるけど
ギャーギャーうるさい女の子を見ててこっちまで気分悪くなったよ。
ちゃんと禁煙だよって言えるおばさんはすごいなーと思った!
その後その若い二人が連れていた犬がすごく心配そうにふたりを見てたのが印象的。
この場合はstipaさんが見た状況と比べたらなんでもないことだけど
こうやって若い人に直接言えるドイツ女は偉いなーと感心しちゃったよ。
2007/10/24(水) 05:39:32 | URL | kleeblaetter #-[ 編集]
klee♪
そのおばさん、勇気あるなぁ〜。
どうせ注意しても逆切れされたりして
真面目な話身の危険にも及ぶし
kleeの見た女の子のように危害はなくても
素直じゃない態度でふてくされるのがわかってるから
見てみぬふりが当たり前になっちゃったなぁ。
注意されて過ちを認めて謝った子、見たことないね。
こちらで若い子達の評判すっごく悪いんだけど
ドイツも同じかな?
そのワンちゃん何だか哀れだねぇ・・。
2007/10/26(金) 06:03:53 | URL | stipa #bM1nxC7.[ 編集]

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  • Author:stipa
  • 2001年より英国ロンドン在住。
    1968年生まれのおうし座。
    観光客はまずよりつかない
    南ロンドンの端っこで
    スイス産の夫とひっそり生息中。
    職業:Learning Disability
    Support Worker(長い!)
    成人障害者の生活サポートを
    する仕事です。

    気ままに更新中。
    私自身も頻度がよめません。
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